大阪地方裁判所 平成4年(ワ)8166号 判決 1994年1月19日
原告
大野美紀代
被告
ユタカタクシー株式会社
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金一一三万九二二〇円及びこれに対する平成四年一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを九分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、各自金一〇〇〇万円及びこれに対する平成四年一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、交通事故で傷害を負つた原告から加害車両の運転者に対し民法七〇九条に基づき、所有者に対し自賠法三条に基づき、損害賠償請求した事案(一部請求)である。
一 争いのない事実など(証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実を含む。)
1 事故の発生
(1) 発生日時 平成四年一月九日午後四時一〇分ころ
(2) 発生場所 大阪府守口市京阪本通二丁目三二番地先国道一号線上
(3) 加害車両 被告宮本星一(以下「被害宮本」という。)運転の普通乗用自動車(なにわ五五う四〇九、以下「被告車」という。)
(4) 被害者 普通乗用自動車(大阪五〇そ五一一四、以下「原告車」という。)運転の原告
(5) 事故態様 追突
2 被告らの責任(乙一、被告宮本本人、弁論の全趣旨)
被告ユタカタクシー株式会社(以下「被告会社」という。)は、被告車を所有し、自己のために運行の用に供していた。また、本件事故は被告宮本の過失により発生したものである。
3 損害の填補
被告会社から原告に対し、休業損害等内金として二二万円、道仁病院治療費として九万一九七〇円、総合加納病院産婦人科治療費として七万四二七〇円の合計三八万六二四〇円が支払われた。
二 争点
損害額(特に以下の点)
1 休業損害
原告は、本件事故により約一七二日間の休業を余儀無くされたとして、当時の所得を基礎として七六万五〇〇〇円の損害を主張するが、被告らは原告の受傷程度からすると休業期間が長期に過ぎると争う。
2 慰謝料
原告は、本件事故により、結果的に妊娠中絶を余儀無くされ、その精神的苦痛は筆舌に尽くしがたいとして、妊娠中絶による慰謝料として原告の通院慰謝料に一〇〇〇万円を加算すべきであると主張するのに対し、被告らは過大であると争う。
第三争点に対する判断
一 損害額(以下、各費用の括弧内は原告主張額)
1 療養関係費(一七万一三五〇円) 一七万三四六〇円
道仁病院治療費として九万一九七〇円、総合加納病院産婦人科治療費として七万四二七〇円を要したことは当事者間に争いがない。また、証拠(甲六、一二)及び弁論の全趣旨によると、通院交通費及び文書料として七二二〇円を要したことが認められる。
2 休業損害(七六万五〇〇〇円) 二五万二〇〇〇円
(1) 証拠(甲四の1ないし5、五、七の1ないし10、八の1ないし14、乙一、原告本人、被告宮本本人)によれば、
<1> 本件事故は、原告運転の原告車が信号待ち停止中、被告宮本運転の被告車が追突したものであり、原告車は修理費として一五万三〇〇〇円を要するに止まる程度の損傷を受けた。
<2> 原告は、本件事故当日、道仁病院でレントゲン検査による診察を受け、レントゲン検査では異常は認められなかつたが、傷病名として頸部・腰部挫傷、約一〇日の通院安静加療を要すると診断され、内服・湿布・注射により治療を受け、平成四年三月三日まで五五日間通院した(実通院日数一七日、なお、内訳は一月に一四日、二月に二日、三月に一日である。)。総合加納病院において平成四年二月三日妊娠七週であると診断され、道仁病院の医師も、レントゲン検査時、内服療法時に原告は受胎期に当たつていたと考えられるので人工妊娠中絶が必要と診断したので、総合加納病院において同月七日人工妊娠中絶手術が行われた。同病院には同月三日から同年三月五日まで通院(実通院日数四日)した。
<3> 原告は、本件事故当時、パーテイーの企画、結婚式の司会者派遣等を業務とする株式会社シアーズ・ブレイン・ソサイアテイーに勤務し、毎月一三万五〇〇〇円の収入を得て、経理事務等を担当していたが、本件事故後、平成四年一月一〇日から同年六月三〇日まで一七二日間休業した。
以上の事実が認められる。
(2) 右受傷の程度、通院治療状況に照らすと、平成四年三月五日までの五六日間の休業は止むを得ないが、同月六日からは稼働可能であつたと認められ、原告の休業損害は二五万二〇〇〇円と認めるのが相当である。
(計算式)135,000÷30×56=252,000
3 慰謝料(一〇三〇万円) 一〇〇万円
証拠(甲九、証人大野隆右、原告本人)によれば、原告は夫との間に男子(平成元年一二月二六日生)を儲けてはいたが、本件事故当時、第二子の妊娠に気づかないまま受診の際にレントゲン検査を受け、内服薬による治療を受けたため、医師に人工妊娠中絶が必要とされ、やむなく右手術を行つたこと、本件事故当時妊娠二週目であつたこと、右手術による原告の精神的打撃は甚だ重大であつたことが認められる。これに前記受傷程度、通院治療状況を勘案すると、その慰謝料としては一〇〇万円が相当である。
4 小計
以上によれば、原告の本件事故による損害額(弁護士費用を除く)は一四二万五四六〇円となり、既払金三八万六二四〇円を控除すると、一〇三万九二二〇円となる。
5 弁護士費用(一〇〇万円) 一〇万円
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は一〇万円と認めるのが相当である。
二 まとめ
以上によると、原告の本訴請求は、被告らに対し、各自金一一三万九二二〇円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成四年一月一〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由がある。
(裁判官 髙野裕)